面倒な遺産相続手続きを国家資格者が完全代行!

遺産相続のマメ知識

法律
ステップ(1)で見たように、まずやるべきは「遺言」の有無の確認です。そこで遺言が出てきた場合について考えましょう。家庭裁判所の検認を受け、いざ遺言書を開封してみたら、たとえば「子孫に美田は残さない。全額を福祉団体に寄付すべし」と書かれていたりすると、どうでしょう。

被相続人の意思を尊重することが遺言の主旨ではありますが、遺族としては困ります。十分な報酬を得て働いていたり独自の財産があれば別ですが、それまで被相続人の扶養に入っていたりした場合、生活が行き詰ってしまいます。

はたまた、複数の相続人がいるのに、「事業を継いでくれる長男にすべてを与える」と遺言されていたらどうでしょうか。長男はいいかもしれませんが、ほかの相続人はこれまた内心穏やかでありません。

遺言があれば、遺産分割協議書がなくても、相続人が一人で相続手続きができます。この場合、たとえば長男がこっそりと手続きしてしまうと、あとで弟や妹から「遺留分の請求」を起こされれば、しこりが生じるでしょう。その内容の如何を問わず、遺言は、相続人全員で確認すべきです。

こうした遺言内容が明らかに偏っていた場合、法律は不利益を被る相続人のためにいくつかの方策を用意しています。この方策を知っていれば、不毛な議論を避けられるでしょう。

遺留分とは

「最低限これだけの遺産はもらえる」と法律が保障している取り分のこと。
たとえば法定相続人として3人の兄弟姉妹がいるのに、「長男にすべてを与える」と遺言されている場合でも、この通りに長男が相続を受けることはできません。兄弟姉妹の頭割の3分の1に対し、さらに2分の1が遺留分となります。つまり、弟と妹が6分の1ずつで、長男は6分の4となります。

遺留分の権利があるのは、被相続人の配偶者、子、直系尊属だけで、兄弟姉妹にはありません。子が死亡している場合は、その代襲相続人(孫)にも権利があります。また相続人によって割合は異なり、配偶者と子の場合は2分の1、直系尊属の場合は3分の1となります。
なお、遺留分は請求しないと手にできません。請求先は、遺産を多く受け取った相続人や寄付を受けた団体などとなります。

寄与分とは

故人が営んでいた事業を手伝ったり、故人の老後の世話を焼いたりしていた人に対して、手厚く遺産配分させるため、「寄与分」という考えがあります。寄与分が認められるのは、(1)故人の事業に対して労力を提供した者、(2)故人の事業に対して出資など財産を提供した者、(3)故人の生前に病気療養の看護を務めた者、(4)故人の生活費を支出したり財産を管理するなどして財産維持に貢献した者、です。
ただし、遺留分と違って、寄与分は計算方法までは法律に明記がなく、相続人の話し合いで決めます。たとえ寄与、貢献をした人でも、自分からはなかなか言い出しにくいもの。円満解決のためには、ほかの相続人が少し譲歩するという態度が必要です。

特別受益とは

被相続人が生存中に相続人に贈与された、お金や土地、現金などの財産のことです。「遺産の前渡し」といえば、分かりやすいでしょうか。仮に遺産が法廷相続分ずつ分割されるとすれば、生前贈与を受けた人は生前贈与の分だけ、生前贈与を受けなかった人より得をすることになり、不公平が生じます。
そこで、特別受益を考慮し、遺産分割することになります。特別受益がある場合の計算式は、次式となります。
特別受益額

この計算でマイナスになる人は、「それだけ生前に多く贈与を受けているのだから、遺産相続はなし」になります。ただし、ほかの相続人から、生前贈与の特別受益を差し戻せという請求を受けることもありません。